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「ちょっと、君!」
参戦者最後の一人がいる病院。
最後の戦いを目指し、宗司がその病院へ入ろうとした時だった。
「…え?俺?」
入口の警備員に声を掛けられ宗司は足を止める。
「そう、君。
病院に入るにはそこで名前を書かないとダメなんだよ。」
警備員の指す先には面会者受付と書かれた場所だった。
「…名前ですか?」
「そう。最近じゃ病院も色々と警戒心を高めていてね。」
…名前。
宗司にとって…いや、ゲームに参加している者なら誰でも敏感になる言葉。
とりあえずそこまで行ってみるか…。
「分かりました。ありがとうございます。」
宗司はそう警備員に言って指示通りの場所へ向かう。
……しっかり看板も付いてるし、怪しむ事も無いか…?
まぁ、名前は偽名を使えばいいか…。
出来れば他の誰かが受付を利用する様子を見て状況を把握したかったが、時間帯が悪いのか誰も来る事はなかった。
休日の夕方じゃこんなものか。
警備員に指示されたのにうろうろするのもマズいし……仕方ない、さっさと済ませるか。
受付に行き、そこにいた女性から指示を受ける。
「こちらに貴方の名前をお書き下さい。」
渡された一枚の紙には名前と面会相手の名前を書く欄があった。
こんな簡単な物か…。警戒しすぎたな。
ま、それでも偽名にするけど…。
自分の名前の欄には鈴木宗司と名字を変えて書き込んだ。
面会相手はもちろん分かっている。
……源次郎と。
「お願いします。」
そう言って宗司は書き込んだ紙を受け付けに渡した。
今思えば渡す前に気付くべきだった。
先程警備員は警戒心を高めていると言っていた。
それなのに単に名前だけで済むはずがないのだ。
「ありがとうございます。
では、身分証を確認させて下さい。」
…!?
「身分証?」
「はい。……無いと面会には行けないのですが…。」
偽名なら誰にだって使う事が出来る。
だが、身分証を偽るなどそう簡単には行かない。
クソ…!
偽名なんて使うんじゃなかった…。
宗司は身分証を探す振りをして時間を稼ぐ。
持ってないことにして、後日来るか…?
しかし、それも……。
こうやってハプニングが起きる客は覚えられやすい、それに警備員にだって……。
だからって忘れられた頃では遅すぎる…!
最後の一人はまだ未知の存在…。
改めて来るなんて危険過ぎる!
……やはり、このまま…。
「あ、ありました。」
そう言って宗司は学生証を渡す。
受付の女性はそれを受け取ると、そこに書かれた名前と先程紙に書いた名前を照らし合わせる。
しかし名前の違いに気付き、少し戸惑いながら宗司に問い掛けてきた。
「あの…お名前を聞かせて頂けますか?」
「え…?そこに書いてある通りですが…。」
「それが…書いて頂いたのと、身分証の名前が違ってまして…。」
「……あ!すみません…!」
宗司は指摘された事に今気付いたかのような様子を見せる。
しかし、単に名前を間違えましたでは納得はしてくれないだろう。
勿論それは宗司も分かっていた。
「そっちの…学生証の名前が正しいです。」
それは受付の女性も分かってはいた。
ただ、間違えた理由が知りたかった。
その理由しだいでは面会を拒否しなければならない。
「……何故名前を間違えたのですか?」
「…あの……」
宗司はその問い掛けを受けると戸惑いを見せ始めた。
「…その…親が離婚しまして…それで……」
それを聞き女性は理解した。
彼の戸惑いは恥ずかしさからか…。
それとも辛さからか…。
どちらにしろ、これ以上問い掛けるべきではない。
そう思うと宗司が全てを言い切る前にそれを止める。
「…分かりました。」
少し微笑みながら女性はそう言う。
宗司は、すみませんと軽く会釈を返す。
…ま、俺もまだ子供だ。
ならそれを最大限活かさないとな。
「では、もう一度こちらに書き直して下さいますか?」
「あ、はい。」
もう一度紙を受け取り、今度は正しく名前を書く。
「お願いします。」
書き終えた紙を渡すと今回は難無く受け取り、面会の許可をもらった。
「あ、面会相手のお部屋は分かりますか?」
「ええ。分かります。大丈夫です。」
分からないわけがない。
そこに待ち受けているのは最終決戦。
全てが決まる運命の場所なのだから…。
「お騒がせしました。」
そう言って、宗司は受付を後にする。
page.71「病室」へ続く・・・
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